幸清水公園(秋葉1丁目)

最終更新日:2023年3月14日

幸清水(さきしみず)(市指定文化財)

新津丘陵は古くから石油の出る場所でした。そのため、能代川には油分が流れ込み、地下水も油やガス、鉄分などの有機物を多く含んでいました。良質な飲み水を確保するため、住民は苦労していました。
文化4(1807)年、新津町の庄屋であった長井久左衛門は水脈を探しているうち、秋葉山のふもとで湧水を発見しました。その場所は田家村の地内であったので、久左衛門は田家村庄屋の吉沢九平太に交渉し、快諾を得ました。そして自費で設備を整え、住民に自由に利用させました。
「幸清水(さきしみず)」と名付けられたこの湧水は、その後も尽きることなくわき続け、昭和7(1932)年に上水道が完成するまで、およそ130年もの間、貴重な飲用水として住民に恩恵をもたらしました。清水の前には朝夕、水を汲む人々が長い列をなし、なかには水の運搬を請け負う業者もいました。水桶を天びん棒でかついで行き交う女性たちの姿は、新津の風物詩の一つになっていました。
水道の普及に伴い、水を汲む人は次第に少なくなり、今はわずかにわき出る水に往時をしのぶことができます。
幸清水は昭和50年、新津市の史跡に指定され、合併により新潟市の指定文化財(史跡)となっています。
幸清水の他にも、新津丘陵のふもとには桜清水(中村)、ひさかき清水(田家1)などの湧水が見られます。

幸清水碑

湧水を発見した長井久左衛門は、書家としても知られた公家の花山院愛徳(かさんのいんよしのり、1755~1829)に命名を依頼し、「幸清水」と命名されました。清水の傍らに立つ「幸清水碑」には、花山院愛徳が書いた由来の文と、歌人でもあった公家の芝山持豊(1742~1815)が詠んだ「幸清水汲む人誰も思うらし宿の主の深き情けを」の歌が刻まれています。

公園内の石碑

太田水穂・四賀光子夫妻歌碑、小林徹雄歌碑

太田水穂の歌「とこしへにつくることなく湧き出づる幸の清水のさやけかる歌」
四賀光子の歌「秋葉山湧きてあふれて幸清水うるほひあまる人の言の葉」

小林徹雄の歌「すがれ菊未だ匂へり十二月三日六十九回古希の我が誕生日」

太田水穂(おおたみずほ、1876~1955)は、歌人・国文学者で大正4(1915)年に短歌雑誌『潮音』を創刊しました。新津でも、水穂の影響を受けた田沢孝次・吉川重虎・小林徹雄らが、昭和初年に新津潮音会を結成し、作歌に励んでいました。新津潮音会の会員たちは昭和10(1935)年6月には新津短歌会を創設し、その年の秋に太田水穂・四賀光子夫妻を新津に招きました。水穂は新津高等女学校で講演し、その折、夫妻は幸清水と秋葉山を散策しています。歌碑に刻まれているのは、その時のことを詠んだ歌です。なお、妻の四賀光子(しがみつこ、1885~1976)は、夫の死後『潮音』の主宰を引き継ぎ、また宮中歌会始の選者を長らく務めました。
新津短歌会の一員として、太田水穂夫妻を新津に招いた小林徹雄(1894~1964)は歯科医で、昭和5年に潮音社の同人となり、歌集『幸清水』・『菊の露』・『菊信偈』を残しました。また、菊の育種家として品種改良に没頭し、「旻香会(びんこうかい)」という団体を立ち上げました。
これらの歌碑は、平成22年12月に郷土に親しむ会によって建立されました。

感恩仰徳碑

昭和15(1940)年は、「紀元二千六百年(神武天皇が即位してから2600年)」に当たるとされ、全国各地で記念行事が行われました。11月10日には内閣主催の紀元二千六百年式典が挙行されますが、新津でも記念式典が開催され、町を挙げて紀元二千六百年を祝いました。これを記念して新津町が建立したのが「感恩仰徳碑」です。
「感恩仰徳」とは、「恵みをありがたく思い、立派な行いを敬う」ということです。碑文は、幸清水の発見や上水道建設が新津の発展や住民の生活安定のためにもたらした恩恵を振り返る内容となっています。
この碑文の撰者である貴族院議員の建部遯吾(たけべとんご、1871~1945)は、横越(江南区)出身で東京帝国大学教授を務めた社会学者でした。

大正天皇即位記念碑

大正4(1915)年11月10日、大正天皇の即位の礼が京都御所で行われました。これを記念して、新津青年団が建立した碑です。碑には、侯爵であった久我通久(こがみちつね、1842~1925)が書いた「駐駕の盛儀、昨に具に瞻る。即位の大礼、今恭しく祝す。」の文字が刻まれています。
「駐駕の盛儀」とは、明治天皇が明治11(1878)年9月20日に北陸巡幸の途中で新津に立ち寄り、本町の桂誉恕(たかひろ)邸で宿泊されたことと、大正天皇が皇太子だった明治35年5月25日に熊沢の油田を視察されたことを指します。なお、熊沢の地には明治40年に建立された「皇太子駐駕処」碑があります。

参考文献

  • 『新津市史』
  • 新津市立記念図書館編『新津市の文化財 第1集 いしぶみ編その1』(新津市教育委員会、1977年)
  • 新津市秋葉寿楽会『創立三十周年記念誌』(1993年)
  • 郷土に親しむ会編『新津のいしぶみ』(1996年)

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