HIV・エイズに関するFAQ
最終更新日:2013年10月29日
よく聞かれる質問とその回答です。
Q エイズって、どんな病気?
A エイズ(AIDS)とは、Acquired Immune Deficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)の頭文字をとった病名で、私たちの体に自然に備わっている病気に対する抵抗力、つまり免疫機能が働かなくなる深刻な病気です。
- エイズを引き起こすのは、HIVと呼ばれるウイルス
HIVは、Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)の略で、1983年に発見されました。このウイルスが免疫機能の主役を務める白血球の一種であるリンパ球を破壊し、免疫機能を低下させていきます。
- 免疫機能が落ちると、病気にかかり易くなります
私たちの身のまわりには細菌やウイルス、カビなどがたくさん存在していますが、普通はこれらが体内に入っても自然の免疫機能が働き、病気にはなりません。
ところが、HIVに感染して免疫機能が落ちてくると、細菌やウイルス、カビなどが体に入り、どんどん増え続け、ついには重い肺炎やがんなどにかかり命を失うことになります。
しかし、HIVの感染力は弱く、感染ルートも限られています。正しく理解してキチンと予防すれば恐れることはありません。
Q HIV・エイズのことをなぜ知らなくちゃいけないの?
A HIVの感染は決して海の向こうの話ではなく、日本も感染者が増えています。誰でもHIVに感染する可能性があるのです。
- 現在、HIV感染を予防するワクチンはありません
今、全世界でワクチンの研究が続けられていますが、HIV感染を完全に予防するワクチンの開発は当分難しい状況です。
- 特別な人だけが感染するのではありません
年をとっているか若いか、男か女か、同性愛か異性愛かなどに関係なく、誰でも感染の可能性があります。
- HIV・エイズから身を守るには正しい知識が欠かせません
感染を防ぐには、一人ひとりが感染経路を正しく理解することがまず第一。従って「教育こそ最良のワクチン」と言われています。
誤解や偏見をなくすためにも、HIV・エイズを正しく理解しましょう
HIV・エイズについての正しい知識があれば、もし、あなたの周囲の人が感染したとしても恐れる必要はありません。
Q HIVにはどのように感染するの?
A 主な感染経路は3つです
HIVが多く含まれているのは、1.血液 2.精液 3.膣分泌液です。感染原因の70~80%が性的接触による感染と言われています。
1.性的接触による感染
感染者の精液や膣分泌液に含まれているHIVは、性器や直腸、口などの粘膜を通してパートナーの体内に入り感染します。
2.血液による感染
汚染した注射針や注射器での麻薬の回し打ちは危険です。また、感染者の血液が傷口や粘膜に多量につくとうつる可能性があります。
輸血による感染について
日本では、輸血用血液の厳重な検査が行われています。しかし、極めて稀ですが、感染の可能性を完全に排除することはできません。
3.母親から赤ちゃんへ
母親がHIVに感染していると、妊娠中の母親の体内で、また出産時、出産後に血液や傷口から感染する可能性があります。また、母乳を通しての感染も報告されています。母子感染の確率は10~30%です。
Q 日常生活でHIVってうつるの?
A 性的接触以外の日常生活ではまず心配いりません
HIVは、空気感染や唾液などの飛沫感染、蚊などの昆虫を媒体とした感染はしないことがわかっています。つまり、性的接触以外の日常生活ではうつりません。例えば、次のようなことは心配いりません。
- 学校や電車、バスの中で誰かの隣りに座ってもうつることはありません。
- 咳やくしゃみなども心配いりません。
- 蚊やその他の虫に刺されても心配いりません。
- 洋式トイレを使っても心配いりません。
- 本や文房具を一緒に使っても心配ありません。
- イヌやネコなどのペットからうつることはありません。
- 理容店や美容院も器具類の消毒は完全ですから安心です。
- 体に触れたり、握手してもうつりません。
- 食堂で食事をしたり、グラスや皿などの食器を一緒に使っても、うつることはありません。
- プールで泳いだり、お風呂やシャワーでうつることはありません。
Q HIVに感染するとあらわれる症状は?
A HIVに感染しても、無症状の期間が長い病気です。
1.無症状期が長い
感染直後にインフルエンザに似た症状が2週間程度出ることがありますが、大多数の人には自覚症状がありません。この無症状の期間が数年から10年以上にもわたって続きます。
2.無症状期を過ぎるとエイズ関連症候群があらわれる
例えば、次のような症状がしつこく続き、段々重くなっていきます。
- 寝汗や発熱が続く。
- 首のまわり、脇の下、股の付け根などのリンパ腺が腫れる。
- 原因もなく、急激に体重が減る。
- 疲れやすくなる。
- 下痢をするようになり、食欲がなくなる。
- 口の中に白い斑点ができる。
こんな症状があっても必ずしもHIVが原因とは限りません。
しかし症状が数週間続くようなら、医師の診療を受けてください。
3.さらに症状が進むとエイズを発病する
体の抵抗力が弱くなり、普通の時には何でもない弱い細菌やカビ、原虫に感染し易くなったり(日和見感染症)、悪性腫瘍もでき易くなります。カリニ肺炎やカポジ肉腫が代表的なものです。そして、こうした状態をエイズと呼びます。
カリニ肺炎
カリニ博士が発見した微生物が肺に寄生しておきる肺炎の一種です。体の免疫力が正常なら、全く心配のいらない病気です。
カポジ肉腫
皮膚や内臓にピンクや褐色、紫色などの斑点ができるがんの一種です。体のどこにできるかは人によって違い、また全員にできる訳ではありません。
HIVは脳神経系も襲い、意識低下や記憶力低下の症状が現れることがあります。例えば・・・・
- 健忘症
- 無関心
- 決断力の喪失・部分的まひ
- 運動機能の障害
- 知覚機能の障害 など
まだ、エイズの根本的な治療法はありませんが、新薬の登場によって、病気の進行や発病を何年も遅らせることが可能になってきました。
Q HIV感染を避けるためには?
安全な性行動を選択しましょう
いつでも節度ある性行動を心がける
海外へ旅行や出張すると、解放感からついハメを外しがちです。また、アルコールや薬物は抑制力を弱め判断力を狂わせ、無防備な性行動に走らせる危険性があります。
よく知らない人とのセックスや売買春をしない
よく知らない人とのセックスや売買春は危険です。HIVに感染しても無症状期が数年から10年以上と長いため、HIV感染について話し合えるパートナーとの安全なセックスをする必要があります。
たった一度のセックスでも感染する
確かに性行為でのHIVの感染率は0.1~1.0%と報告されています。しかし同時に、たった一度のセックスでの感染も報告されているのを知っておいてください。
アナルセックス、オーラルセックスなどはなるべく控える
肛門内部は血管が集中し、傷つき易いので、とても感染し易い部分です。精液が直接口に入るオーラルセックスも危険です。激しいディープキスも、口の中に虫歯や傷があると血液で感染する可能性があります。
最善の予防はコンドームを使うこと
感染していない相手以外とのセックスには、必ずコンドームを使うようにしましょう。正しく使えばセックスでの感染を防ぐ最善の方法ですが、100%安全でないことも覚えておいてください。
麻薬はどんなものでも手を出さない
麻薬の回し打ちは、感染率が非常に高くなっています。しかも麻薬は、人格を破壊してしまいます。もし、一度でも麻薬注射の経験があるなら、すぐに医師に相談しましょう。
心当たりのある人は検査を受けましょう
もし過去に、HIVに感染したのではないかという心当たりのある人は、HIV検査をお勧めします。
Q もし、周囲に感染している人がいたら?
A HIVは感染力の弱いウイルスで、性的接触以外の日常的な接触では感染することはなく、学校や職場、近所付き合いなどの生活で感染することはありません。これまでと同様に接するようにしましょう。
また、感染者や患者は、孤独や不安を抱き易いので、思いやりが必要です。
HIVに感染したのは本人のせいではない
日本のエイズ患者、HIV感染者の約40%は血液製剤での感染者です。最近は母子感染も出ています。性的接触での感染も、売買春で感染した人ばかりではありません。感染させた人も自分がHIV感染者と思っていなかった人がほとんどです。
本人が公表してない場合は、決して他の人に話さない
感染者であることを打ち明けられたり、偶然にある人が感染者であることを知った場合、本人が公表していない限り、決して他の人に話してはいけません。社会全体がエイズへの偏見をなくし、患者や感染者を支援するようになるまで、一人ひとりがプライバシー保護に努めるようにしましょう。
これまでと変わらない態度で接しましょう
健康な人と変わりなく生活できる感染者に対しては、これまで同様の関係を続けましょう。特別に気を遣ったりする必要はありません。病状が進んだ場合も、がんや心臓病など他の病気と同じように接することです。
思いやりを表現し、力になりましょう
感染者は、ちょっとした激励の言葉や思いやりのある態度に勇気付けられることがあります。周囲に誤解や偏見がある場合は、エイズについて正しく理解するよう、働きかけましょう。
これだけは注意してください
- 血液が、直接粘膜につかないようにします。皮膚は、傷口がなければ心配いりません。
- 血液に触れた場合は、すぐに流水と石鹸で洗い流してください。心配なら、エタノールやオキシドールなどの消毒薬をつけます。衣類の消毒は家庭用漂白剤に10分くらい浸します。
- 感染しているいないに関わらず人が出血した時はゴム手袋をして介抱してください。
Q もし、あなたがHIVに感染していたら?
A 感染しても数年~10年以上の無症状期は、普通の生活ができます。医学の発達で、さらに発病を遅らせることも可能です。不安な気持ちを支えてくれるのは、「納得できる治療」と「悩みを打ち明けられる相手」です。健康を維持する努力をして、生活を楽しみましょう。
専門医の診療と生活指導を受ける
- 保健所や相談機関などに相談し、HIV感染者の治療の経験のある医師や病院を紹介してもらいましょう。
- 定期的に診療を受けて免疫の状態を調べ、検査や治療をしてもらいます。日常生活で、健康を維持するためのアドバイスも受けてください。
悩みを相談できるカウンセラーや支援グループ、友人の協力を求める
- 日本ではいま、医療や教育、企業など様々な分野でカウンセラーを養成中です。エイズ相談機関に紹介してもらい、信頼関係をつくりましょう。
- 民間の支援グループも、感染者の生活や悩みの相談にのっています。
- 落ち込んだ気持ちや悩みを話せる友人がいれば、いっそう勇気づけられるでしょう。
仕事を続ける
仕事は、自尊心と生活の維持にとても大切なものです。定収入が入り、気持ちに張りも出てきます。仕事上で同僚に感染させる心配は、全くありません。
他の病院で医師にかかるときは、陽性であることを知らせる
医師や看護師に感染させないためにも、また感染者が適切な治療を受けるためにも必要なことです。妊娠についても、医師とよく相談して決めてください。
ほかの人に感染させないため、次のことに心がけてください
- 血液のつくおそれのあるものは共用しない
カミソリ、毛抜き、歯ブラシなどは、自分専用にしてください。
- 献血、臓器提供をしない
感染率が非常に高いので、絶対してはいけません。
- 性行為を持った相手に知らせる
感染の拡大拡大を防ぐために、ぜひとも必要です。
- 性行為をする場合は、コンドームを使う
性行為をするときは、最初から最後まで、コンドームを使用します。
Q HIVは治療すればうつらない? U=Uとは
効果的な治療を続けていればHIVは感染しない
A U=U(Undetectable=Untransmittable)とは、効果的な抗HIV治療を受けて血液中のHIV量が検出限界値未満(Undetectable)のレベルに継続的に抑えられているHIV陽性者からは、性行為によって他の人にHIVが感染することはない(Untransmittable)、ということを表すメッセージです。
近年、国際的な研究によってこれを指示する多くの科学的知見が集積され、世界的なムーブメントになっています。
現在、HIVに感染すると体のなかから完全にウイルスを除去することはできませんが、HIVの増殖を抑える薬で治療を続け免疫力を保ち、これまでとかわらない社会生活を送ることができます。このような治療を抗レトロウイルス療法(ART)といいます。ここでは抗HIV療法と呼びます。
HIVの治療では、抗HIV療法を始めた後、個人差はありますが、1~6か月でHIVの血液の中の量を測る検査をしても見つからない状態までウイルス量を抑えます。こうして検査でHIVを見つけることができない状態を続けることが、現在の通常のHIV治療とされており、日本では検査で感染が分かっている多くの陽性者がこの状態を維持しています。
そして最低限、このようなHIVを検査でみつけられないくらい抑え込む状態を半年間続けたその後からの状態を「Undetectable 検出限界値未満」と呼びます。
このような「Undetectable 検出限界値未満」という状態になっているということは、HIVに感染している陽性者にとって、治療が順調に進んでいる、ということを意味しますが、それだけではなく、もはや性行為によってはパートナーにHIVを感染させることは一切ない、ということも意味することが科学的に根拠づけられました。
HIVに感染すると、現在の医療技術では完全にウイルスを除去することはできません。しかし、抗HIV療法をきちんと継続し、「Undetectable 検出限界値未満」の状態を維持していれば、HIVに感染していない人と同じく、性行為によって誰にもHIVを感染させることはない「Untransmittable 感染しない」状態となります。
性行為で感染しない、というのは異性間であっても同性間であっても、男性であっても女性であっても変わりません。例えば、男女間であれば、子どもが欲しいと思った場合、パートナーのどちらがHIV陽性であっても、感染していない人と何ら変わることなく、性行為で妊娠してもパートナーに感染は生じない、ということです。
ただし、U=Uが示しているのはHIVの性行為による感染リスクについてのみです。他の性感染症や、HIVによる主な感染経路のうち、陽性者との注射針の共有、陽性者の母乳による授乳については依然として感染の可能性は残されています。
適切な治療を受け血液中のHIV量が検出限界値未満となり、それを6か月以上継続している人からうつらない
※U=U Japan Project から引用しています。
Q HIV検査を受けるには?どんな検査をするの?
A 保健所等で匿名検査ができます
全国のほとんどの保健所等で、匿名の検査を実施しています。検査結果は本人にしか知らされませんので、心配いりません。事前に保健所等に連絡して検査の日時を確認してください。原則として無料で、検査が受けられます。
検査は思いあたる日から1か月後に (完全否定する場合は2か月後)
HIV検査は、感染機会から1か月経ってから受けましょう。(感染を完全に否定するためには、2か月経ってからの検査をお勧めします。)
検査は血液を少し採るだけです
検査は、血液を5cc程度採るだけで終わります。もし、この最初の検査(スクリーニング検査)で陽性と出た場合は、確認検査を受ける必要があります。
検査目的の献血は絶対にしてはいけません!
感染していても抗体ができるまでの期間は検査でわからないため、輸血で感染させてしまう恐れがあります。