市報にいがた 令和元年11月3日 2706号 1面から3面
最終更新日:2019年11月3日
コメと園芸で 元気な農業へ
本市は一次産業である農業に支えられ、大きく発展してきました。
今号では、本市の農業の現状と園芸農業に取り組む人を紹介します。
問い合わせ 農林政策課(電話:025-226-1772)
園芸農業とは
花卉(かき)、野菜、果樹などの園芸作物を栽培する農業をいう
園芸を農業の新たな柱へ
本市は日本一の水田面積を誇る全国有数の大農業都市として発展を続けてきました。
一方で、人口減少などによるコメの消費量の減少や外食の普及に見られる食の多様化など、コメを取り巻く環境は昔と比べて大きく変わってきています。これまで主流であった家庭用米の生産だけでなく、業務用や米菓用などそれぞれの需要を見極めながらコメ作りをしていくことがこれからは大切になってきます。
また、農業経営を持続的に発展させるためには、コメだけでなく園芸作物を導入するなど経営の幅を広げていく必要があります。本市では「もうかる農業」を目指した取り組みの一つとして、新たな園芸産地づくりの支援を進めています。市内各地では野菜、果樹、花卉(かき)などのさまざまな園芸作物が生産されており、いずれも全国に誇れる魅力的なものばかりです。これらの導入・拡大を推進し、新たな生産の柱となるよう支援することで生産者の所得の安定・向上につなげていきます。
「もうかる農業」の推進を通して農家の皆さんを、さらには新潟市を元気にしていきたいと思います。
新潟市長
コメ作りを大切にしながら園芸導入に取り組む
インタビュー(1) 地域で取り組む園芸ハウス導入
農業の後継者を増やすためにも、農業を稼げる産業にしたい
木津ハウス組合(江南区木津) 代表 坪谷 利之(つぼたに としゆき)さん
新潟のコメを守り続けたい
坪谷さんが農業を始めたのは22歳の時。先祖代々続いてきた農家を継ぐため、東京で4年間勤めた陸上自衛隊を辞め新潟に戻ってきました。27歳の時に、生産の効率化のため近隣の8農家が集まり「木津みずほ生産組合」として法人化しました。
同生産組合が発足当時から力を入れてきたのがコメの流通先の開拓です。おいしいコメをできるだけ安く食べてもらいたいという思いから、直売を中心に販売先を増やしていきました。「コメが不作の年も値上げをせず、直接買ってくれるお客さまを大切にしてきた」と坪谷さん。販売先の多くは口コミで広がっていきました。
「新潟は全国に誇るコメの産地。これを守り続けていくためにも農業を稼げるものにしていかなければいけない」。年間を通して安定した収入を得るため、田植え・稲刈りの時期以外に園芸作物の導入に取り組み始めました。
4法人が協力し園芸を導入
同生産組合は、2年前に近隣の農業法人(あしぬまカントリー、エフ小杉、エーエフカガヤキ)と一緒に「木津ハウス組合」を設立。ビニールハウス7棟でイチゴ、ミニトマト、イチジクの作付けを始めました。複数の農業法人による園芸ハウスの大規模導入は県内で初めての取り組みです。「以前からお互いに作業を手伝うなど協力してきた4法人だからこそ、この事業に取り組めた」。
ハウス栽培の共同経営は、栽培ノウハウや労働力などを共有できることが利点です。同ハウス組合では収益性を向上させるため、取れた作物をエーエフカガヤキの直売所で販売するなど、共同経営の利点を生かした取り組みも行っています。坪谷さんは「これからは近隣の法人とも協力し、効率化・収益性の向上を図っていくことが大切。コメを中心に園芸作物も含めて所得の安定・向上に向けて取り組んでいきたい」と意気込みを語ってくれました。
「新潟米のおいしさには自信があります」
ハウス栽培で収穫した作物は同ハウス組合の共通ブランド「ユニークSUN'S(サンズ)」として販売
10月4日に中原市長が同ハウス組合の園芸ハウスを視察。エーエフカガヤキの阿部さん(写真左)からイチゴの成育状況について説明を受ける
インタビュー(2) 田んぼを有効活用タマネギ栽培
自分が種から育てた作物を“おいしい”と言って食べてもらえたときが一番うれしい
有限会社味方ふぁーむ(南区味方) 玉木 利恵子(りえこ)さん
地域の農地を守りたい
「母の手伝いで始めたミニトマトの栽培が楽しかった」。
玉木さんは自然を相手にする農業の魅力に引かれて、それまで勤めていた仕事を辞め、6年前に「味方ふぁーむ」に転職しました。
同社は地元の5農家が集まって作った法人で、県内でも有数の稲の作付面積を誇ります。近隣の農家が高齢化し担い手が減少する中、預かる農地が年々増えているのだそうです。「農業の担い手はこれからますます減っていくと思います。地域の農地を守るためにも、私たち若い世代が頑張らなければいけない」。
同社では、コメだけに頼らない経営のためにトマトや小松菜、タマネギなどの園芸作物の栽培を行っています。玉木さんは現在、園芸作物全般の栽培を任されているそうです。
田んぼでタマネギ栽培
同社が園芸作物で今一番力を入れているのがタマネギです。「農地を有効活用するため、稲刈りが終わった田んぼにタマネギの苗を植え、翌年5月ごろに収穫をしています。寒さに強く冬を越せることがタマネギの魅力の一つです」。
ことしで3年目となるタマネギ栽培は試行錯誤の連続だといいます。1年目・2年目にうまく育てられなかった反省を生かし、今回は品種を変えたり、水の量を調整したりしました。「農協職員の助言もあり、ことしの苗は順調に育っています。収穫時期が楽しみです」。
同社では11月中旬を過ぎると忙しさが落ち着くそうです。玉木さんは「農業の良いところは1年を通して忙しさにめりはりがあること。毎年、冬には社員全員で旅行に行っています。今はそれを楽しみにしながら仕事を頑張っています」と笑顔で教えてくれました。
味方ふぁーむの仲間。若い世代が地元に戻り、従業員は増加
10月中旬に、乾いた田んぼに機械で苗を植える。写真は植え終えた状態のもの
タマネギの苗はハウスで栽培
新潟市の農業
本市は水田面積、農業就業人口が全国1位、農業産出額(全体)が全国6位の大農業都市です。主要品目はコメで、部門別の産出額は全国1位です。
農業産出額(全体)の上位の市町村を見ると、野菜や畜産物などが主要作物となっています。
本市でも収益性の高い園芸作物とコメとの複合営農を推進し、農業者の所得の安定・向上につながるよう支援していきます。
水田面積、農業就業人口 全国1位
1位 | 新潟市(28,400ヘクタール) |
2位 | 秋田県大仙(だいせん)市(18,300ヘクタール) |
3位 | 岩手県奥州(おうしゅう)市(17,100ヘクタール) |
1位 | 新潟市(15,257人) |
2位 | 青森県弘前市(11,796人) |
3位 | 静岡県浜松市(11,576人) |
出典:農林水産省「平成30年面積調査」、「2015年農林業センサス」
農業産出額(全体)は全国6位、コメ部門では全国1位
順位 | 市町村名 | 金額 | 産出部門(上位3つ) |
---|---|---|---|
1位 | 愛知県田原市 | 883.3億円 | 野菜、花卉(かき)、豚 |
2位 | 宮崎県都城(みやこのじょう)市 | 771.5億円 | 豚、肉用牛、ブロイラー(肉用鶏) |
3位 | 茨城県鉾田市 | 754.1億円 | 野菜、豚、イモ類 |
… | |||
6位 | 新潟市 | 579.8億円 | コメ、野菜、果実 |
順位 | 市町村名 | 金額 |
---|---|---|
1位 | 新潟市 | 309.7億円 |
2位 | 秋田県大仙市 | 148.8億円 |
3位 | 新潟県長岡市 | 144.4億円 |
4位 | 山形県鶴岡市 | 141.4億円 |
5位 | 新潟県上越市 | 132.9億円 |
出典:農林水産省「平成29年市町村別農業産出額(推計)」
本市の農業産出額はコメが半分以上を占める
出典:農林水産省「平成29年市町村別農業産出額(推計)」
コメ生産の現状
- 主食用米の国内需要量は毎年8万トンから10万トン程度減少
- コメの販売価格は長期的に低下傾向
(平成2年産は60キログラムで21,600円→平成30年産は60キログラムで15,689円)
出典:農林水産省 食料・農業・農村政策審議会食糧部会資料(令和元年7月31日開催) 参考資料2「米をめぐる関係資料」
地産地消で農家を応援しよう
新潟市食育・花育推進キャラクター まいかちゃん
地産地消に積極的に取り組んでいる店舗には、「地産地消推進の店」のロゴなどを掲げています。市内産の農産物を買って、食べて、農家の皆さんを応援しませんか?
旬の食材や地産地消推進の店など本市の食と花の魅力をツイッター、インスタグラムでも発信しています
食べて!買って!巡って! 豪華景品を当てよう!! 「新潟Gozzo3(ごっつぉさん)めぐり」
キャンペーン参加店舗で各店舗指定の商品(市内産食材やそれらを使ったメニュー)を購入・飲食するともらえるスタンプを3つ集めて応募した人の中から、抽選で豪華賞品をプレゼントします。
※参加店など詳しくは市内の公共施設で配布している同キャンペーンガイドブック(応募用紙付き)に掲載
期間 12月1日(日曜)まで ※応募は12月10日(火曜)まで
賞品
A賞(5人)…参加店舗で使える食材の商品券(2万円分)
B賞(20人)…市内産食材の詰め合わせ(5千円分)
C賞(25人)…参加店舗で使える食事券(2千円分)
問い合わせ 食と花の推進課 (電話:025-226-1794)
編集後記~取材を終えて
新潟の農業を守り続けるため、地域で協力しながら持続可能な農業に取り組んでいる農業者がいるからこそ、私たちはいつでもおいしい物が食べられるのだと実感しました。
私もスーパーなどで買い物をするときは市内産の野菜や果物などを選び、市内の農家を応援していきたいと思います。
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