第7回 ウォーターセル株式会社
最終更新日:2020年6月12日
インタビュー概要
ウォーターセル株式会社は、全国に展開している営農支援ツール「アグリノート」を開発・運営する会社です。2010年、30歳で起業した長井啓友さんに、きっかけや農業の画期的なシステム「アグリノート」についてインタビューをしました。
インタビュー相手
ウォータセル株式会社
代表取締役 長井啓友さん
「新潟にゆかりのあるソフトウエアを作りたい」
「農家さんの悩みから生まれた『アグリノート』」
仕事のテーマを模索していたころ、「公益財団法人にいがた産業創造機構」を訪ねました。そこで、1人の農家さんを紹介され、「農家の人たちはこんな事で困っている」「この悩みをソフトウエアで解決できないか?」との提案があり、「もしかしたら、新潟にゆかりのあるソフトウエアを作りたいという私の信条と合致するかもしれない!」とお話を聞いてみることにしたんです。これが「アグリノート」開発の第一歩です。
「アグリノートは農家さんの要望を一つずつ切り取った農業管理システム」
農家さんの悩みを聞いていくと、農家を辞めた人がほかの農家さんに土地を預けたりしていることが分かりました。そして、1人の農家さんの土地がどんどん増え続けていくことがあるそうです。そうすると、どんどん管理が難しくなっていく…。農地は隣り合う土地でも権利者が異なったりするので、管理が大変なんです。10年ほど前は紙で管理を行っていたのですが、現場へ行って紙と土地を見比べても、どこが自分の所有地か分からなくなってくるんです。その悩みを解消すべく「アグリノート」を開発して、パソコン上で衛生写真のように土地の区画がはっきりと分かるようにしました。「土地を確認するためのITツール」というところからアグリノートはスタートしたんです。それを改良し続け、今では、日報を付けたり、農薬や肥料の量を記録したり、農作物の種類を分類したり、情報は紙やエクセルではなく、アプリの中に簡単に入力できるようになったんですよ。
「ユーザーの気持ちに寄り添ったシステム作りを」
「農家目線のアプリ」を作るために、農家さんの話を聞くだけではなく、私自身も実際に農業を体験しています。また、営業、エンジニア、事務員などの社員も田植えや稲刈りのお手伝いをするんです。そうすることで、話を聞くだけでは気付かなかった問題に直面することもたくさんあります。IT会社というとパソコンとにらめっこしているイメージがありますが、弊社は少し違いますね(笑)。
「無人で農作業をする時代がもうすぐやってくる」
「アグリノート」は日々進化していて、「単なる作業記録」から「農業経営」にまでレベルアップしています。農業機械と連動して、トラクターが畑でどのように動いているかもひと目で分かるようになりました。「農作業がデジタルで見える」ということです。トラクターにGPSや通信機能(3Gや4G)を搭載しているので、リアルタイムで動きを確認できます。これから農家さんがどんどん少なくなる中、「少人数で大面積をどうやってこなすか」という問題に直面します。2030年には日本の農家さんは現在の約半分に減ると言われていますから、私たちはもっともっと進化しなければいけません。ロボットが田植えをしたり、ドローンで農薬をまいたり、無人で農業を行う未来がもうすぐやってきます。
「体を壊さないよう、健康的に仕事を続けていきたい」
IT企業はフレックス制度が多いなか、弊社では、9時から18時を就業時間としてフレックス制度を設けていません(笑)。18時以降は家族や個人の時間を大切にしてほしい。会社の設立当時からワーク・ライフ・バランスは重視しています。1年中農家さんと連携して仕事をしていくので、長距離マラソンのようにずっと走り続けていく事業なんです。社員是認が毎日無理なく走り続けられるように、残業は極力せず、身体的にも精神的にも、健康的に仕事をしていくことが私の理想です。
「休みたい時に気兼ねなく休める会社」
従業員は36名。うち女性は3名。男性の育休制度も積極的に採用しています。「休みたい時にしっかり休める」という雰囲気作りを大切にしているので、女性もずっと働いていける職場だと思います。誰かが抜けても事業が回るように「チームで仕事をする」というのをモットーにしています。弊社のユニークな福利厚生としては、入社後すぐに有給休暇を取得できることや、提携のスポーツクラブに無料で通えるということ。離職率は低い方だと思います。
「ユーザーにも社員にも満足してほしい」
私は経営者なので、ユーザーに満足してもらうと同時に、社員にも満足してもらわなければなりません。事業を行っている以上、社員にもタスクやミッションが生じますが、同時に、働きやすさ、会社環境にも配慮しています。ユーザーも社員もどちらも幸せになってWin-Winの関係を築くことがベストです。社員みんながそういうマインドになってくれるのが私の喜びです。
「ひとつの学問に収まらず、幅広い視野で学んでほしい」
これから就職しようと思う若者には、すぐ東京へ出て行くのではなく、新潟でもおもしろい事ができるという事を知ってほしいです。そのために一つの学問におさまらず、幅広い視野でさまざまな事を学ぶことも大切です。私も20代のうちはいくつかの企業でいろいろなものを見て、視野を広げ、30代で起業しました。20代は見て、聞いて、体験して、転職したっていいと思っています。
「より豊かな未来のために、農業と食品流通をデジタルでつなげたい」」
今後は「アグリノート」に記録されている食べ物の情報を活用して食品流通系(卸やスーパー、レストラン)に販売ルートを作っていきたいと考えています。作業日報があるということはいつ頃、どのくらい出荷しているのか、どんな食べ物を作っているか細かいデータが蓄積されているので、それらをどんどん活用していきたい。生産者も消費者も豊かになるよう、農業生産と食品流通を情報でつなげていきたいと思っています。
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