知っておきたい建築物の管理責任
最終更新日:2021年9月9日
倒壊、外壁材等の落下により隣接建物や通行人などに被害が発生すれば所有者等が責任を負うことに
倒壊、外壁材等の落下により隣家等の建物損害や死亡事故等の人身損害を発生させた場合、民法第717条に基づき所有者等が損害賠償責任を負う可能性があります。
参考民法抜粋
第717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
また、その損害額について、「空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査」では、次のような試算が公表されています。
空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査(公益財団法人 日本住宅総合センター)(外部サイト)
倒壊による隣接家屋の全壊及び居住者の死亡事故を想定した場合、約2億1千万円の損害額
外壁材等の落下による通行人の死亡事故を想定した場合、約5千6百万円の損害額
身近に潜む事故の危険性
令和元年9月に新潟市秋葉区内の建築物において、外壁の一部が車道に落下する事例や、平成25年6月に新潟市中央区の建築物において、外壁の一部が歩道部分に落下する事例が発生するなど、建築物の老朽化について管理不全による事故も発生しています。
建築物の維持保全は、所有者、管理者、占有者に課せられた努力義務です。日頃から定期的に点検し、異常が発見された場合は早急に改善しましょう。
また、建築物の維持保全は、通常時だけでなく、地震や火災、強風等の非常時・災害時の人的・物的な事故防止や被害の拡大防止、さらには建築物を長持ちさせることにもつながります。
建築物の維持保全も建築基準法に定められた努力義務
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的としています。
建築物を建築する場合に行う「建築確認申請」、工事が完了した場合などに行う「完了検査」はよく知られているところですが、維持保全が不十分であれば建築の際に確保された建築物の適法な状態の継続は期待できず、ひいては法律の目的を達することができない状態になります。
そこで建築基準法では、このような維持保全不十分さによる不都合が生じないようにするため、建築物の所有者、管理者又は占有者に対して、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持保全するよう努力義務を課しています。
点検の相談は建築士などに
建築物は、用途が変化したり、利用方法が変わったり、模様替えをしたり、時間の流れに応じて変化する場合があります。
建築物が、適法な状態にあるかどうかの判断は、建築基準法を読み解くなど非常に難しいものです。
また、劣化についても、普段気付かない部分が大きな事故を引き起こすこともあります。
日常的な点検の方法や、定期的な点検については建築士などにご相談ください。
点検の目安について
事故防止のための点検の目安については次のリンクを参考にしてください。
建築物の危険な状態を放置していると、市から指導を受けることがあります
市では、建築物の安全性の確保等を図ることを目的に、市、建築物の所有者、建築主、市民及び事業者等の責務を明らかにするとともに、基本的な事項などを定めた「新潟市建築物の安全性の確保等に関する条例」を制定しています。
この条例に基づき、市では、危険な状態にある建築物の所有者等に対して、改善を求めるために指導・勧告を行うことがあります。
詳しい内容は、パンフレットをご覧ください。
新潟市建築物の安全性の確保等に関する条例施行規則(外部サイト)
屋根雪の管理について
冬季間になると、屋根や鉄塔等からの落雪や落氷による事故の発生が懸念されます。
また、屋根雪によって建物の倒壊・破損等の危険があります。
屋根雪による災害を防ぐため、こまめな雪下ろしや落雪防護策など事故発生の予防に努めましょう。
空き家住宅・建築物の屋根雪管理に心掛けましょう(新潟県作成)(PDF:263KB)
建築物の水災害対策について
令和元年東日本台風(第19号)による大雨に伴う内水氾濫により、高層マンションの地下部分に設置されていた高圧受変電設備が冠水し、停電したことによりエレベーター、給水設備等のライフラインが一定期間使用不能となる被害が発生しました。
このような洪水、内水、高潮等の発生時においても建築物の機能継続を確保するためには、浸水被害に備え、建築物における電気設備の浸水対策を充実させることが有効です。
詳しい内容は、ガイドラインをご覧ください。
また、新潟市では、浸水被害の軽減を図るため、住宅、店舗、事務所等に防水板等の設置工事について助成金の交付を行っています。
建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(概要)(PDF:1,329KB)
建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(本編)(PDF:18,171KB)
屋外階段の安全対策について
令和3年4 月17 日、東京都八王子市の木造3 階建て共同住宅において、屋外階段の落下による死亡事故が発生しました。
このような事故を未然に防ぐため、所有者等は定期的な点検や必要に応じた建築士等専門家による詳細調査を実施し、劣化のおそれがあるような事象が確認された際には、有効な防腐処理を施すなどの対策を実施してください。
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