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349号(令和3年10月17日) 1ページ

最終更新日:2021年10月17日

米俵事件を知っていますか?

中央に中ノ口川、南に信濃川が流れる南区。2つの大きな河川は、芳醇な土壌、美しい景観をもたらしてくれる反面、南区の歴史は水との闘いの歴史でした。
昭和36年、中ノ口川の氾濫の際に起こった「米俵事件」は水害に対する教訓と、当時の人々が力強く生きていたことを伝えてくれます。

濁流の中、肩に米俵を担ぎ、米俵を運んでいる男の人たちの写真 濁流の中、米俵を運び込む人々

濁流が押し寄せていている住居の中、男の人が立っている写真 住居に入る濁流

濁流の中、ロープを手繰りながら歩いている男の人の写真 ロープにつかまり歩く人

洪水が去ったあとで米俵の撤去作業を行う人たちの写真 洪水が去って撤去作業に取り組む人々

旧富月橋から見た、米俵の積んである食堂六太郎の裏側の写真 食堂 六太郎の裏に積まれた米俵

大水害から白根を守った米俵

8月5日、朝早くから降り始めた雨で増水した中ノ口川は、午後6時半頃、旧富月橋(ふげつばし)(現:凧見橋付近)の辺りから堤防を越えて流れ出しました。地元の住民・消防団、自衛隊、県警機動隊など約150人が集まり200本の杭、2000俵ともいわれる土のう・石俵(せきひょう)により防ごうとしました。しかし、水の勢いは凄まじく、押し流されるばかりでした。
昔から水害と戦ってきた白根の人々は穀物が水を吸うと膨らむ性質があり、水をせき止める大きな力があることを知っていました。当時の吉沢市長は県などから了承を得られないまま、政府米を土のう代わりに使う決断をし、439俵の米俵を投入。大切な米が泥まみれになり、人々は複雑な気持ちでしたが、多くの尊い命や市民の財産の被害拡大を防ぐことができました。

政府米を土のうの代わりとしたことが問題となり、農林大臣はテーブルをたたいて激高したそうです。
報道陣に対して事情説明にあたった吉沢市長は「短時間の増水でやむを得ない処置だった。越水をあのまま放置して堤防決壊の事態ともなれば、川に囲まれ、逃げ場のない市民はどうなったか分からない。また、水防資材がなくて米を使ったと伝えられているがそうではなく、米俵でなければ防げない状況だった。」と説明しました。

被害総額 4億8030万3000円
死者 1人
負傷者 40人
床上浸水 1800世帯
床下浸水 1100世帯

 

「白根市政だより」昭和36年9月1日号の写真

「白根 市政だより」昭和36年9月1日号
(米俵を土のう代わりに使ったことは)「全国では、初めての措置として問題をなげたが、このため最悪の事態にいたらず、被害を最小限度に食い止めたことは、不幸中の幸いであった。」との記載がある。

当時を振り返って

須田敏明さんの顔写真 食堂 六太郎 店主 
須田 敏明さん
(当時小学1年生)

その日は、朝から子ども会で、近所の子どもたちと角田浜に行きました。雨で海水浴はできず、岩室温泉にある旅館で弁当を食べ、スイカ割りをしたことを覚えています。
夕方、白根に戻ると中ノ口川はすでに水かさを増し、富月橋は渡れず、白根橋から帰ってきました。帰宅すると、家の中に水が入ってきました。母は当時2歳の妹を抱き、風呂敷包みを背負い、その上からランドセルを担いだ私をおぶって、ロープにつかまりながら水の中を歩きました。その日は、旧諏訪木保育園に避難して、翌日、私だけ旧新潟市の親戚の家に行きました。
水害から1週間余りが過ぎ、お盆に私が戻ると父母はもう店を再開させていました。当時、お墓参り帰りの人たちが、かき氷目当てで来店し賑わっていたので、それに間に合わせたようでした。大人たちの大変さは相当のものだったと思います。

水害の後整備された食堂六太郎付近の堤防の写真 水害後整備された堤防

米俵事件から60年が経ち、治水対策が進んだため、水害が起こる恐れは格段に減っています。
しかし、近年は気象状況の変化から短時間に集中的な大雨が降ることが増えています。
過去の水害から学び、今後も備えを忘れないようにすることが大切です。

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