新潟市内企業のDX事例「株式会社鈴木コーヒー ~非生産性非効率の業務をデジタル化、大幅な残業削減~」
最終更新日:2023年6月16日
新潟市内企業のデジタル化による業務効率化や新事業創出などDX推進事例をご紹介します。身近な市内企業におけるDXの取り組みの過程や結果、人材育成や組織づくりなどの事例を自社の取り組みにお役立てください。
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株式会社鈴木コーヒー
新潟市中央区の食品小売卸業「株式会社鈴木コーヒー」は、バックオフィスのデジタル化により残業がない働き方改革を実現し、社員の考える力や創造する力など能力向上にもつながる取り組みに力を入れています。バックオフィスのデジタル化を進めたい全業種の企業にとって参考になる事例です。
- 取材した方 株式会社鈴木コーヒー President and CEO 佐藤俊輔様、DXマーケティング部課長 西田俊介様
- 取材日 2023年1月10日
企業概要、ビジネス、強みはどんなことがありますか。
CRAFTSMAN & SUZUKI COFFEE(長岡直営店)
〈佐藤〉 鈴木コーヒーは来年度で創業60周年を迎えます。外食産業といわれるカフェ、レストラン、飲食店やホテル、県内外で約2500店にコーヒーを中心とした様々な食品、食材を販売している卸企業です。近年では直営店事業にも力を入れ、新潟には伊勢丹、ピアBandai、そして長岡にも直営店を出しています。最近では古町にフランチャイズですが、お店をオープンさせてもらっています。いわゆるBtoBとBtoC、両軸でビジネスを展開している企業です。我々のようなロースター(焙煎屋)は全国に多くあります。その中で当社の強みは、雪室珈琲だったり、芸妓珈琲だったり、いわゆる地域に密着した商品開発がすごく特徴的で、これは全国でも非常に珍しいです。自社で開発した商品を多く持っており、全国に販売しています。
ビジネスを支えるビジョンや目指すことは何ですか。
〈佐藤〉 コーヒーが登場するシーンというのは人々がポジティブになりたい、ハッピーなシーンにしか登場しないと思っています。だから、コーヒーがいろんなところに登場するっていうのは、それだけハッピーなシーンがいっぱいあるんだって。じゃあ、我々がやることってもう決まっていて、いかに一つでも多くのハッピーコーヒーシーンを創造するか、それがまず軸としてあります。
もう一つは雪室珈琲をはじめ、地元で60年、多くのお客様に支えられてこの会社は成長してきたので、やっぱり新潟を盛り上げたい。これも一つ大切なポイントかなと。
そして三つ目が、従業員の幸福。最近だとウェルビーイングっていう言葉がありますが、働きがいとかやりがいとか、これからの時代を支えていく若者たち、この新潟で活躍したい若者たちが鈴木コーヒーを通じてもっともっと世界で活躍できるような、そんな会社にしていきたいなと思っています
御社はデジタル化をどんどん進めていますが、なぜ始められたのですか。
President and CEO 佐藤俊輔様
〈佐藤〉 当社は10年以上前からデジタル化を推進していますが、一番大きな理由は働き方なんですね。僕が入社した当時の鈴木コーヒーは朝6時7時には営業マンがみんな来て、夜中の11時12時まで働く。昔では当たり前だったのですが、時代にそぐわないねって。でも何をしていいかわからない。どうやったら短くできるんだろうって考えた時に、このデジタルを使うという考え方が大きな起因になりました。働き方を変えるのにはDXが大きく貢献するだろうなというのがひとつ。
もう一つが、今でこそAI化、自動化などの言葉が使われているけれど、これから世の中に残る仕事って何かっていうと、クリエイティブな仕事、そしてディレクション、おもてなし、この三つしかないと思ってるんですね。
鈴木コーヒーはやっぱりここにリソースを集中したいわけですよ。だからこれまでやってた非生産性の業務、非効率化の業務は全てDXツールを使って、人が考えなきゃいけないこと、クリエイティブ、ディレクション、おもてなしの部分にリソースを集中したいなと思って、DXを強く推進しています。
長時間働くと働いた気になりますが、だけど違うよということですね。
〈佐藤〉 昔は残業するイコール働いてるなんですけれども、僕はもう数年前から残業に美学がないって。残業するってことは仕事ができないんじゃないかって思っていますよ。
DXに取り組むにあたって、障害になったこと、そして解決方法はありますか。
〈佐藤〉 当社も60年という歴史がある会社なので、古くからいる社員、年配の方もいます。いろいろなタイプの人がいるなかで、ITとかDXに関するリテラシーに大きく差があるのが現状なんですね。僕がこれやりたいから、これやれと言っても、当然できるわけないじゃないですか。そこが大きな障害だなって思いました。
では、どうするべきかといったら、自分自身がDXに一番詳しくなることしかないなと思ったんです。DXを推進したい人間が誰よりも学ばなきゃいけないって考えたんです。僕自身が勉強して学ぶ姿勢を示すことが、一番の解決策だなと思ってやってきました。
DXを取り組むために人材の育成や組織作りで、考えられたことはありますか。
〈佐藤〉 DXを推進するというのは、ある程度費用がかかるものだと思っています。そして、効果が出るまでに時間がかかることも当然あります。ですので、会社全体に、DXに対して投資をするんだよっていう姿勢を示さなきゃいけない。それで最も適切な方法は何かなと考え、2022年4月にDXマーケティング部を作って、IT人材を複数名入れました。会社が社員に対して、DX推進するぞっていう強い姿勢を示す意味では、すごく効果的だったのではないでしょうか。DXに疎い人たちは何やってんだろう?と見えると思うんです。中途半端にやるんじゃなくて、やるなら本気でやろうぜっていう姿勢を示す。僕はこれだけでガラッと変わったなと感じています。
これからの経営や事業で目指してること、変革したいことはありますか。
〈佐藤〉 当社は60周年を迎えるにあたり、新たなビジョンを策定している最中なんですけれども、これまで鈴木コーヒーが多くの方に評価されてる一つのキーワードが、クレイジーであるかどうかだと思っています。クレイジーブランディングっていう言葉を2017年に制定して、いろいろなところで発信をさせてもらって、もっともっとクレイジーにいこうぜって。絶対そっちの方が楽しいんで。楽しい企業を作っていきたいなっていうことで、60周年以降もそのクレイジーというのは大きなキーワードになると思っています。
でも、クレイジーなことやるのって、ものすごくクリエイティブな作業が必要なんですよ。ただ普通に仕事しただけじゃ絶対クレイジーにはなれないんで。だからクリエイティブなリソースをどこまで経営に集中できるか。そこが一番のキーかなと思っています。その中で大切なポイントは、もちろんSDGsとかウェルビーイングとか健康経営とかあるんですけども、DXが大きな鍵かなって考えています。ちょっと他じゃやってないようなことって、DXと組むことでやれるし、逆に言えば非生産性の業務をもっともっとDX化して、もっともっとみんなに考える力、創造する力、ばかになってもらう時間、そういったものを作り上げていきたいなって思っています。
今度はDXを推進しているご担当者にお話しをお聴きします。具体的にどのようなことをしているのですか。
〈西田〉 DXマーケティング部の課長をやっています。業務としては日々のシステムのメンテナンスや今後作っていきたいシステムの手順書を作成し、スタッフに依頼しています。
具体的には、RPAを活用して業務の自動化、パソコン上の自動化ですね。それとPRO STOREっていう業務用チャネルだけをまとめた限定的なECサイトの運営、社員全体が利用するグループウェアシステム、そしてチャットツールですね。メールだけではなくて、簡単に社内の情報交換ができるように、MicrosoftのTeamsを利用しています。
デジタル化に取り組む前と後で、働き方が変わったことはありますか。
DXマーケティング部課長 西田俊介様
〈西田〉 もっとも変わったことはRPA活用による効果ですね。今までは売り上げのデータを営業スタッフ自身がデータ抽出をし、データを分析するために加工作業をしていたんです。その加工作業は40分から1時間ほど時間がかかるんですね。ピボットテーブルなどのExcelの技量も必要で、加工をするだけでデータ分析した気になってしまうんです。(笑)
現在は、RPAを使って売上データを分析できるように自動で加工して、皆さんに配信しているので、皆さんは分析から始められます。やるべき分析業務の開始が早くなり、働き方として、よりクリエイティブな方に動いてると実感できます。
分析を早めに始めた営業スタッフから、ここが足りないからこれで補填していこうという話が聞こえてきます。
DXに取り組む前と後で社員さんはどう変わりましたか。
〈西田〉 DXを推進していこうとしたときに、働き方の変化を嫌う人は多数いました。その時に佐藤社長が、トップ自ら一番学ぶという姿勢を示してくれたのです。そうしたら変化を嫌っていた人がどんどん入り込んでくれるようになりました。
その後は導入したDXに対して、「なんでこんなの導入するんだ」ではなく、「もっとこうしてほしい」という導入前提のポジティブな意見が多数出てきたんです。本当は変化することは嫌だと思うのですが、社長のやる気、本気の部分をみんなが見ることによって、ポジティブに変えていこうという反応が多くなってきたと感じています。
デジタル化をやってきて失敗談などはあったのでしょうか。
〈西田〉 現在、チャットツールで社内の連絡を取り合っていますが、実は今のTeamsに辿り着くまでに、いくつかのツールを使っていました。始めては止め、始めては止めとやっていると、「なんでそんな何回もやめるんだよ」という声もありました。しかし、業務に合わせて、このTeamsを活用できているのは、他のチャットツールを経験したからです。今までのツール採用が失敗ではなく、経験したからこそ一番使えるツールに行き着いたと考えています。
最後に、新潟市内の企業さんに向けて、DXについて感じていることをお話しください。
〈西田〉 言い方が悪いかもしれないんですけど、楽して稼ぎたいなら絶対やった方がいいなって思います。何より自分の業務時間が減っていくのが目に見えてわかるので、すごくお勧めしたいですね。
業務時間が短縮されるっていいですね。インタビューさせていただき、ありがとうございました。
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