市長説明

最終更新日:2016年2月23日

平成27年度 地域ミーティング

市長説明

 全国で地方創生が大きなテーマになっている。平成26年12月、国がまち・ひと・しごと創生総合戦略を作り、今後は都道府県や市町村も作ることとなったため、新潟市でも平成27年10月末に総合戦略を作成した。
 総合戦略を作る時代背景として、一番大きいのは人口減少である。1億2,500万人を超える日本の人口が、このまま何もしなければ、2040年代には1億人を割るという予測が出ている。日本の人口が1億人を突破したのは1960年代の半ばだったが、そのときの高齢化率は6.5パーセントだった。一方、2040年では高齢化率が40パーセント以上になると予測されており、同じ1億人でも中身が全く違う。このことについては、かなりの危機感を持ち、真剣に取り組んでいく必要があると思っている。
 本市の人口も同様な形で上昇を続け、そして横ばいから微減、さらに何もしなければ、大幅な人口減少になり、2040年には67万人を割るという予測が出ている。その内容として、生産年齢人口を見ると、減少傾向に入り、さらに減少幅が大きくなる。年少人口は、今まで減少してきたものが、さらに減少していく。一方、高齢者人口は、さらに増え続け、2040年あたりがピークになるとの予測である。出生数については、20代後半の女性の出生数がかなり減少している一方で、30代後半の出生率が微増しており、このあたりに晩婚化、晩産化という傾向がはっきりと見て取れる。
 合計特殊出生率では、ここ数年、新潟市は1.3前後で推移している。同規模政令市である浜松市、岡山市、熊本市を比べると、新潟市よりかなり高い率となっている。都市の規模が同じでなぜこれだけの差が出るのか。その理由を探っていく必要があると考えている。子どもの数の割合では、大幅な減少が続いているという状況である。
 転入、転出の状況では、10代後半と20代前半において、首都圏などに出ていくために、大幅な転出超過になっている。一方、20代後半から40代半ばくらいまでは、主に県内からではあるが、転入超過が続いている。この10代後半と20代前半の大幅な転出超過を何とかしない限り、新潟県も、新潟市も、人口問題への対応が難しいということである。
 今回の総合戦略を作るにあたっては、国の勧めもあって、人口ビジョンも作成した。このまま何もしなければ、2040年には新潟市は67万人を割るとの予測なので、まずは社会増をしっかりと伸ばしていくことが土台であり、そのような目標設定になっている。
 出生率については、市民が望む子どもの数は2.4人というデータがあるので、2040年までに、そこまで伸ばそうというのがシミュレーション(1)のラインである。一方、現状はそのラインまでは難しいのではないかということで、持続可能な2.07人を目指すというのがシミュレーション(2)のラインである。(1)だと2040年で74万人をキープできるが、(2)でも72万5,000人程度はキープできる。今後の取り組みによって差が出てくると思うので、(2)のラインから、できるだけ(1)のラインに近づけていきたい。
 もう一つ、今回の総合戦略を作るにあたり、若い世代を中心にアンケートを実施した。1つ目の質問は「子育てする場所として新潟市は魅力的と思うか。」である。「思う、どちらかといえば思う」は43パーセント、「思わない、どちらかといえば思わない」は27~28パーセントという状況であった。「思わない、どちらかといえば思わない」と回答した方に、その理由を聞いたところ、1番多かったのは「子どもを遊ばせる場所が少ない」であった。2番目は「保育所などが充実していない」であったが、これにはかなりのショックを受けた。新潟市は、数年前に、ある子育て雑誌で「子育てに一番優しい都市は新潟市である。」という第三者評価をもらったことがある。その後にも、あるNPO法人が「県庁所在都市の中で、どこが一番子育てに優しいか。」を評価したとき、第1位は富山市に譲ったが、第2位は新潟市であった。
 このような情報が、若い世代に伝わっていないということであり、このことは大きな問題だと思っている。子どもの数が急速に増えている地域では、まだまだ保育所の充実が必要なところもあるが、市として待機児童ゼロを守り抜いてことを若い世代にしっかり伝えていきたい。
 2つ目の質問は「働く場として新潟市は魅力的と思うか。」である。「思う、どちらかといえば思う」は42~43パーセント、「思わない、どちらかといえば思わない」は2割弱あった。「思わない、どちらかといえば思わない」と回答した方に、その理由を聞いたところ、1番多かったのが「魅力的な大企業が少ない」で、2番目が「魅力的な中小企業が少ない」であった。大企業はともかく、新潟市の中小企業の中には、そうとう意欲的で、また世界的に活動、活躍している企業もあるわけで、こういったことをもっと伝えていく必要がある。3番目に多かったのが「地元企業は採用にあまり一生懸命ではない。」であった。しかし、新潟市の求人倍率は全国平均、全県平均をかなり上回っているわけで、新潟の企業は優秀な人材を求めていることももっと伝えていく必要がある。大学生に影響力を持つ大学の進路指導の先生方にも、地元には良い企業、特に良い中小企業があるということを伝えていきたい。また、30代の女性が一番働きやすいのは新潟市であるというデータもあるので、そのようなことも伝えていく必要があると思っている。
 3つ目の質問は「新潟市は住みやすいまちと思うか。」である。こちらは「思う、どちらかといえば思う」が87パーセントで、その理由は「食べ物がおいしい、治安が良い」であった。これは実態と合っていると思う。新潟市は、凶悪犯罪発生率が極めて低い。出火率の低さも京都市と例年一番を争っている。こういったこともしっかりと伝えていきたい。
 
 次に、首都圏暮らしと新潟暮らしを比較してみた。
 お金の面ではどうか。初任給の平均、あるいは生涯の収入は、東京の方がかなり上であるが、その大半は住宅関係で消えてしまう。家賃が大きく違うし、物価も新潟の方が安い。
 時間の面ではどうか。仕事時間は新潟の方が少し長いが、通勤時間は新潟の方が断然短い。その分、余暇時間もたっぷり取れるという状況である。
 仕事の面ではどうか。有効求人倍率は東京に若干負けているが、正規の雇用率を見ると10ポイント以上新潟の方が高い。東京に行けば何とかなる、いい仕事があるのではないかと思って行くと、現実はかなり厳しいということである。女性の就業率も10ポイント以上新潟が高い。
 住まいの面は圧倒的に新潟である。持ち家比率が、政令指定都市ナンバーワンの新潟と東京では相当に違う。1世帯あたりの延べ床面積も政令指定都市ナンバーワンの新潟は、東京の倍近くある。土地付きの注文住宅費用も大きく違う。東京で良い家を作ろうとすればそれだけで生涯の収入の差は消えてしまう。
 子育ての面ではどうか。保育園の待機児童について、新潟はゼロであるが、東京は長蛇の列である。子どものいる夫婦の共働き率について、新潟市は政令指定都市ナンバーワンであり、東京よりも10ポイント以上高い。育児時間も新潟市は政令指定都市の中で非常に長い。人口1万人当たりの保育所数でも、新潟市は政令指定都市ナンバーワンで、東京とは圧倒的な差である。
 安心面ではどうか。凶悪犯罪の発生率で、東京は新潟の倍以上発生している。出火率も東京は新潟よりもかなり高い。安心安全の土台ともいえる自治会の加入率では、新潟市は浜松市に次いで政令指定都市ナンバーツーの93パーセント以上、東京は56パーセントであり、本当にこれで大丈夫なのかと思ってしまう。このようなデータを取りながら、総合戦略の基本方針を決めたわけである。
 なお、新潟市は、にいがた未来ビジョンという、今年度から8年間の総合計画を作り、その中で、安心協働都市、環境健康都市、創造文化都市の三つの都市像を掲げ、それを実現しようとしている。福祉関係は、にいがた未来ビジョンに基づいて、しっかりと取り組むので、総合戦略にはあまり盛り込んでいない。総合戦略は、雇用の創出と少子化対策などを重点的に作り出していくということが特徴である。
 総合戦略では4つの基本目標を掲げている。1つ目は「新たな産業集積による雇用創出」、2つ目は「創造交流都市としての拠点性を活かした交流人口の拡大」であり、この2つは、しごとの視点である。3つ目は「ライフステージに応じた一貫した支援による少子化の克服」でこちらは、ひとの視点である。4つ目が「地域力・市民力を活かした誰もが安心してくらせるまち」でこちらは、まちの視点である。地方では、何としても仕事を作り出し、少子化は対しては、一刻も早く克服へと動き出す必要がある。それがまちの賑わいにつながり、まちが賑わえば、仕事を生み、それがまた少子化を克服するといった好循環を作り出せると考えている。

 ここからは、4つの基本目標ごとに説明する。初めに1つ目と2つ目の基本目標、働く場についてである。
新潟市は、直近の2014年はたまたま社会減であったが、ここ10年間では大体社会増になっていて、「5年後の社会増470人」ということを数値目標として設定した。社会増のためには企業立地が重要であり、西蒲区と南区では、戦える産業の柱となりうる航空機産業、具体的には共同部品工場が動き出している。この航空機産業への取り組みは、かなり注目されている。農村・田園地帯に大きな影響を及ぼす食産業、農業も伸ばしていきたい。新潟市は農業戦略特区に選ばれ、今、さまざまなプロジェクトが具体的に進み出している。ローソンファーム新潟では、ここで作られた米が、この秋に東京あるいは千葉県のローソンでも、塩むすびと無洗米として販売された。セブン&アイグループでは、セブンファーム新潟市をつくり野菜を栽培した。そこで作られた大根やかぶは神奈川県のイトーヨーカドーでも販売され、非常に人気が高かったとのことであった。新潟の農産品は非常に良いということで、来年はもっと多く売っていくという方向性も示してくれている。
 また、農業の国際競争力、一番端的なのが米の輸出なので、新潟クボタが米の輸出を大きく伸ばしている。その新潟クボタがNKファームというものを作り、来年は西蒲区で輸出米に特化した米づくりをやってくれる。そのほかにも、西区では、耕作放棄畑、砂丘地畑で小麦を栽培し、できた小麦を新潟の製粉会社が使ってパンを作るという動きも出てきた。このような農業特区の動きについて、より波及効果を出したいし、創業、起業の支援も一貫してやっていきたい。
 U・I・Jターンの促進はどうか。実績をあげているという点では、西蒲区の越前浜地区が一番だと思っている。「越前小学校は統合しない」という方向性のもと、この10年ほど地域全体でU・I・Jターンに取り組んでいる。集落の人口は720人くらいだが、その中の94人がU・I・Jターン、あるいはその家族のもとで生まれた子どもという状況である。今後は、このような農村型の取組み以外に、まちなか型も増やしていきたいと思っている。
 拠点性の向上、交流人口の拡大も、働く場に大きく影響が出る。まちの活性化に一番ありがたいのは宿泊人口が増えることであるが、新潟市では2009年からずっと伸びている。この宿泊者数を5年後には、さらにここまで伸ばそうという数値目標を設定している。そのために、新潟の多彩な資源、観光資源を大いに引き出していくための取組みを強化していきたい。
 次に、2つ目の基本目標、少子化の克服についてである。
まずは切れ目のない支援を行っていく。また、仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスも重要である。夫婦が理想とする子どもの数と、実際に持つつもりの子どもの数との差を埋めていくことを目標にしている。目標の実現のために、まずは男女の出会いが必要になるが、コミュニティ協議会をはじめ、NPO、あるいは企業が、出会いの場を創出するためのさまざまな取組みを進めてくれている。安心して妊娠、出産ができるための支援体制を強化していくことも非常に重要である。ワーク・ライフ・バランスでは、男性が家事や育児で役割を果たした家庭は、第2子、第3子の生まれる率が高いというデータもある。新潟の男性は女性への依存度が高い傾向にあるので、これを変えていく必要がある。若い方にはワーク・ライフ・バランスを考え、改善していってほしい。
 また、新潟への愛着を育む教育の推進も非常に重要である。小学生すべてに農業体験学習と食育を実施するという教育ファームが完全に動き出しており、さらに強化していきたい。貧困の連鎖を断ち切るという面では、いわゆる貧困世帯の子どもが教育にしっかり取り組めるようマンツーマンで指導していく。東区でモデルをやって成果があったので、これから市全域に広げていくという状況である。また、大学も危機感を高めており、行政などと連携していこうという動きも出始めている。大学の進路指導の先生方に、新潟の優良企業をもっと知ってもらうための取組みを強化し、進学、就職での流出を抑制し、流入を増やすことにつなげていきたい。
 
 次に、3つ目の基本目標、誰もが安心に暮らせるまちについてである。
 多様な生活環境を選択できる暮らしは、首都圏、東京ではなかなか選択できないと思っているが、今回のアンケートにおいて、新潟で暮らしたくない、出て行こうと考えている方が、その理由として一番多く挙げたのが「新潟は公共交通が貧弱だから」であった。断トツのトップだったので、公共交通の充実、持続可能な公共交通ある暮らしに向けて、もっと頑張っていく必要があると思っている。空き家の活用は、西蒲区の越前浜地区でも有効だったので、そういった取組みへの支援を、農村型だけではなく、まちなか型も含めてやっていきたい。元気なお年寄りには、どんどん新潟に来てもらうという取組みも進めていきたい。安心・安全の土台である自主防災組織や地域コミュニティなどの活動がもっとやり易くなるよう、支援の強化を前進させていきたい。
 持続可能な公共交通のある暮らしでは、新バスシステム、BRTは、スタート時点で料金システムのトラブルなどで市民に大変ご迷惑をおかけした。現在は安定期となり、新潟交通には冬ダイヤで頑張ってもらっている。この新バスシステムをこれからも改善を続け、持続可能なバスシステムにしていくことが非常に重要である。また、公共交通や自転車で移動しやすく、歩いて楽しいまち、健康づくりとまちづくりが連携するスマートウエルネスシティの推進を明確にしていく。健康に良いことをする方、環境に良いことをする方、そういった方に、ポイントを持ってもらうことで動機づけにしていきたい。ポイントは「りゅーとカード」にも付くという形にしていきたい。
 魅力的なまちなかを感じられる暮らしでは、地域の個性や歴史、文化が、地域の誇りとなる、シビックプライドの源になるような取組み、そして国際交流がしっかりとできる新潟、これはいいねと多くの方に思ってもらえるよう、さらに取り組んでいきたい。また、地域それぞれのまちなかの再生、活性化も非常に重要であり推進していきたい。
 
 これから、新潟暮らしの良さをさらに伸ばして、また弱点や欠点は早期に克服して、創造運動として本格的に進めていきたいと考えている。さまざまなデータから、新潟には暮らしやすさの土台があることを確認できたので、この暮らしやすさを政令指定都市ナンバーワン、日本ナンバーワンにしていこうという取組みを、市民と一緒になって進めていく。その結果、暮らすなら新潟市、子育てするなら新潟市と言われる、選択される新潟市を早期に作っていこうというのが総合戦略の大きな方向性である。
 まちなかに素晴らしい田園地帯があり、農とも親しみながら多様な暮らし方ができるのは首都圏では無理であり、21世紀にふさわしい、人々が多様な暮らし方を選択できるのは、新潟市などの地方都市であるということをもっともっと知ってもらう。そういった取組みによって人口の流出を止め、そして流入を促進する運動を創造運動という形で推進していきたい。

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