(6-7)能登半島地震による被災家屋の公費解体について
最終更新日:2024年10月1日
(6-7)能登半島地震による被災家屋の公費解体について
令和6年7月10日苦情申立書受理
申立ての趣旨(要約)
能登半島地震による被災家屋の公費解体制度について、事前相談を経て4月に申請を行った。その後の担当課とのやり取りで、7月末に解体が完了できるよう努力するとの説明に合わせて、アパートの借用、引っ越しの手配、電柱の移設や建築業者の手配のほか、解体後の新築家屋に設置するソーラーパネルの設置補助金(県・市)の申請など、解体への対応や新たな生活拠点の再生に向け自身も動いていた。
ところが、6月に入り一方的に解体の延期を告げられたことで、これまでに行ってきた作業がやり直しや無駄になり、住宅の建て替え計画の予定を立てることもできず、建築業者などの関係者に迷惑をかけ費用も嵩むこととなった。
また、生活再建支援金についても令和7年1月末で申請受付が終了することから、支援金が受けられない可能性もあり困惑している。
当初の説明から解体の実施が延びたことに対し所管課に説明を求めたが、納得のいく説明がなかったため、市長への手紙を書き、回答を得たが、自分は全体で何番目の受付で、どのような支障により解体着手が延びたのかなど具体的な説明がなく納得できる回答ではなかった。
また、対応した職員が私への電話連絡を約束しておきながら、連絡もなく退庁したことは無責任な行為である。
一度打ち出した方針や担当課職員の言動について責任をもって対応してほしい。
所管部署
環境部廃棄物対策課(以下「所管課」という。)
調査の結果の要旨
令和6年9月27日決定
申立人の主張及び所管課の説明と双方から提出のあった資料に基づき、当審査会では以下のとおり判断し調査結果とします。
1.事実関係
(1) 本件に関する事実経過は次のとおりです。(すべて令和6年)
4月4日、申立人が公費解体申請、所管課が同日に受付。
5月1日、1回目現地調査を実施。
5月16日、申立人が所管課担当者に公費解体決定通知に関する進捗確認の電話連絡。
5月22日、所管課が申立人に公費解体決定通知書を送付。
6月6日、申立人が所管課担当者に現地調査の進捗確認の電話連絡。
6月7日、所管課担当者が申立人に公費解体管理委託業者と同月10日に打合を実施し、翌11日に申立人に連絡する旨電話連絡。
6月10日、所管課が公費解体管理委託業者と公費解体の進捗について打合せ実施。
6月11日、申立人が所管課に電話連絡。担当者不在。
6月12日、所管課長が申立人に連絡。公費解体スケジュールが全体として遅れていること、連絡が遅くなったことへのお詫び。また申立人宅の解体時期が6か月程度遅れることを伝える。同日、申立人が市長への手紙を送付。
7月2日、市長への手紙の回答を申立人へ返信
(2) 公費解体のスケジュールは当初予定から次のとおり延期されています。(すべて令和6年)
・2月26日~3月上旬:申請から解体完了まで2か月程度
・3月上旬~4月上旬:申請から解体完了まで3~4か月程度
・4月上旬~5月上旬:申請から解体完了まで4~5か月程度
・5月中旬~6月上旬:申請から解体完了まで4~5か月程度
・6月上旬~6月下旬:申請から解体完了まで8か月程度
・6月下旬~7月上旬:申請から解体完了まで10か月程度
・7月中旬~:申請から解体完了まで10~12か月程度
2.審査会の判断
(1) 申立人は、「当初の説明から解体の実施が延びたことに対し所管課に説明を求めたが、納得のいく説明がなかったため、市長への手紙を書き、回答を得たが、自分は全体で何番目の受付で、どのような支障により解体着手が延びたのかなど具体的な説明がなく納得できる回答ではなかった。」旨の苦情を述べています。
この点、所管課は、当初予定していた申請から解体までのスケジュールが延びたことを認めた上で、その理由について、「初めての事業のため、経験に乏しい中で解体期間を設定したこと、申請開始時から申請が殺到したため混乱が生じたこと、また業務管理の委託先についても小規模な公費解体の経験しかなく、公費解体の期間延長の判断が出来なかったことなどにより、申請開始当初から計画に遅れが生じた。また、解体工事が始まってからも、当初見込んでいた工期(2週間程度)よりも期間を要し(4週間程度)、また解体工事の際、周辺住民からの苦情等により、より慎重な工事を求められるなどが原因でスケジュールが遅れた」旨説明をしています。また、公費解体の進捗に関する情報提供については、「電話での問い合わせがあった際や公費解体決定通知書発送時に連絡事項として、次の手続きである三者立会までの概ねの期間をお知らせしていた」旨の説明をしています。その上で、所管課としては、「解体スケジュールが大幅に伸びたことについて、こちらのスケジュールの見込みが甘く、ご迷惑をおかけしたことをお詫びする。しかしながら、申立人からの強い主張(解体の順番を早めてほしい、スケジュール通りに進めてほしいなど)が度々あったため、なるべく穏便に済ませようとしたことが、申立人に期待を持たせ、結果的に失望させてしまったと考える。」との説明がありました。
当審査会としては、能登半島地震が稀に見る大規模災害であったこと、公費解体制度は所管課にとってもはじめての事業であったこと、申請件数が当初の想定を遥かに超えるものであったことなどから考えると、申請から解体完了までの期間が当初の予定よりも延びてしまったこと自体はやむを得ないものと考えます。
もっとも、所管課は本案件の申立人との対応を進めて行く過程で、他にも同様の事態がある可能性に思い至り、申立人ら申請者に対する公費解体の進捗状況に関するアナウンスについて工夫を行う必要があったのではないかと考えます。被災した申立人ら申請者にとって公費解体の時期は極めて関心の強い事項であるところ、申請者から問合わせを受けたときに進捗状況を伝達するといった受け身の姿勢ではなく、出来るだけ積極的に公費解体の進捗状況を申請者はもちろんのこと、外部に発信することがより望ましかったものと考えます。ただし、このような対応をするためには所管課だけの対応では限界があるとも考えられます。
そこで、所管課や当事業を統括する立場の方、広報担当部署等と連携し、市のホームページや市報等に公費解体の進捗状況の掲載を行うほか、報道を通じての情報発信など、適時に正確な情報が伝わるようその方策を検討していただき、今後は本案件のような事態が生じないよう対処していただくことをお願いしたい旨付言します。
(2) 申立人は、「対応した職員が私への電話連絡を約束しておきながら、連絡もなく退庁したことは無責任な行為である」と苦情を述べています。
この点、所管課は、課内の伝達ミスで約束していた連絡が申立人に出来なかったことを率直に謝罪しています。
当審査会としても、所管課に対しては、課内できちんと意思伝達を行い、申立人らに対して約束した応答を執るべきであったと考えます。
(3) なお、今回の事態が生じてしまった原因には、申立人から所管課担当者に対する強い主張等による申入れ等により所管課担当者が萎縮してしまったという面も否定できません。今回のような大地震に伴う公費解体は、申立人はもちろん、所管課にとってもはじめての事柄です。このような状況下では、当事者が協力して円滑なコミュニケーションがとれるよう、お互いの立場を配慮することが望まれます。
(4) 最後に、申立人は、被災者生活再建支援金(以下「支援金」という。)の申請が令和7年1月末で受付を終了することから、支援金が受けられない可能性もあり困惑しているとしています。
この点、所管課の説明では、支援金を担当する福祉部署が申請期限の延長について県と共に国に要望しているとのことですので、公費解体の進捗状況を福祉部署とも共有し、支援金申請の期限延長に最大限の努力をお願いしたいと思います。
以上、本件では、上記(1)の付言のとおりお願いすることをもって、新潟市行政苦情審査会規則第16条第1項に基づく是正等の意見表明ないし制度改善の提言を行う必要はないものと判断し調査結果とします。
規則第16条第1項
審査会は、苦情等の調査の結果、必要があると認める場合は、市長等に対し、当該苦情等に係る市の業務について、是正その他の改善措置(以下「是正等」という。)を講ずるよう意見を表明し、又は制度の改善を求める提言をすることができる。
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